デザイン思考とは?フレームワークや活用方法について解説

デザイン思考

デザイン思考とは、ユーザーのニーズを深く理解し、新たな価値を創造するための思考法です。
新しいものを創造する思考法として、デザイン思考は重要視されています。
本記事ではデザイン思考について以下の点を中心にご紹介します。

  • デザイン思考とは
  • デザイン思考の方法は
  • フレームワークとは

デザイン思考について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

デザイン思考とは

デザイン思考とは、ユーザーのニーズを深く理解し、新たな価値を創造するための思考法です。
以下の3つの特徴があります。

ユーザー中心性

デザイン思考では、ユーザーのニーズを第一に考えます。
ユーザーの課題や潜在的なニーズを理解するために、ユーザーインタビューやフィールドワークなどの手法を用いて、ユーザーの声を直接聞き取ります。

プロトタイピング

デザイン思考では、アイデアを形にして、ユーザーに試してもらうことを重視します。
プロトタイプを繰り返し作成・改善することで、よりユーザーのニーズに合った製品やサービスを実現することができます。

アジャイル開発

デザイン思考では、プロセスを段階的に分割して、柔軟に変化に対応できる開発手法であるアジャイル開発を採用しています。
これにより、市場の変化やユーザーのニーズに合わせて、製品やサービスを迅速に改善することができます。

デザイン思考が注目される背景

デザイン思考が重視されるようになった背景には、以下の2つの理由が挙げられます。

多様化の進展

近年、社会や個人の価値観は多様化しています。
そのため、従来の「画一的な製品やサービスを提供する」という発想では、ユーザーのニーズを満たすことができなくなってきました。
そこで、ユーザーのニーズを深く理解し、多様なニーズに対応できる製品やサービスを開発するために、デザイン思考が注目されるようになりました。

技術革新の加速

技術革新の加速により、新しい製品やサービスが次々と生み出されています。
そのため、企業は常に競争力を維持するために、新たな価値を創造する製品やサービスを開発する必要に迫られています。
そこで、ユーザーのニーズを起点に、新たな価値を創造できるデザイン思考が注目されるようになりました。

デザイン思考のプロセス

スタンフォード大学のハッソ・プラットナー・デザイン研究所の、ハッソ・プラットナー教授によると、「デザイン思考」をするには、以下の5つのプロセスがあると提唱しています。

  1. 共感 Empathise
  2. 定義 Define
  3. 概念化 Ideate
  4. 概念化 Prototype
  5. 検証 Test

プロセスを上から進めていったり、戻ったり、同時進行したりすることもあります。
検証後は、前のプロセスに戻って繰り返し、検討することが大切です。
以下、それぞれのプロセスについて説明します。

共感 Empathise

デザイン思考は、ユーザーの課題を解決するためには、まずユーザーの視点に立って考えることが大切です。
そのためには、アンケートやインタビューなどの調査を通して、ユーザーの声を集め、課題を深く理解する必要があります。

定義 Define

デザイン思考の2段階目「定義」は、ユーザーの「本当の課題」を明確にすることを指します。
そのためには、共感プロセスで得られた情報を整理・分析し、ユーザーのニーズを深掘りする必要があります。

例えば、ユーザーが「ブログを書きたい」と言ったとします。
しかし、ユーザーの本当の課題は、単にブログを書くことではなく、ブログを書くことで「何を実現したいのか」にあります。

ユーザーがブログを書くことで「副収入を得たい」「自己分析をしたい」「有名になりたい」といったニーズを抱えている場合、そのニーズを解決するための製品やサービスを開発することが、ユーザーの課題を解決することにつながります。

ユーザーのニーズは、ユーザー自身も気づいていないことも多いものです。そのため、ユーザーの行動や発言を観察し、その背景にある想いを分析することが大切です。

概念化 Ideate

デザイン思考の3段階目「概念化」では、ユーザーの「潜在的なニーズ」を満たすためのアイデアを創造します。
そのためには、定義プロセスで探求したユーザーの潜在的なニーズを実現する方法を考え、自由な発想でアイデアを出すことが必要です。

例えば、ユーザーが「ブログを書きたい」と言ったとします。
この潜在的なニーズを満たすためには、ユーザーがブログを書くことで「自己表現したい」「人とつながりたい」という欲求を満たす方法を考えます。

これらの欲求を満たすために、以下のアイデアが考えられます。

  • ブログに自分のアイデアや考えを自由に書けるプラットフォーム
  • ブログを通じて、同じ興味関心を持つ人とつながることができるサービス

このように、定義プロセスで探求したユーザーの潜在的なニーズを実現する方法を考え、自由な発想でアイデアを出すことが重要です。

概念化 Prototype

デザイン思考の4段階目「試作」では、概念化プロセスで出したアイデアを形にします。
試作品を作ることで、アイデアの実現可能性を検証し、ユーザーの反応を直接確認することができます。

試作を行う際には、以下の点に注意しましょう。

  • アイデアをできるだけ早く形にする
  • 試作品の完成度よりも、ユーザーの反応を重視する
  • 試作品を繰り返し作り直す

試作を繰り返すことで、アイデアをより洗練させ、ユーザーのニーズに沿った製品やサービスを開発することができます。

検証 Test

デザイン思考の5段階目「検証」では、試作品をユーザーに実際に使ってもらい、フィードバックを得ます。
フィードバックをもとに、製品やサービスの改善を行います。

検証を行う際には、以下の点に注意しましょう。

  • ユーザーの使用状況や感じ方を観察する
  • ユーザーの意見や感想を積極的に聞く
  • ユーザーのフィードバックをもとに、製品やサービスを改善する

フィードバックを得ることで、製品やサービスの課題をより深く理解し、ユーザーのニーズに沿った製品やサービスを開発することができます。

デザイン思考のメリット

デザイン思考を実践することで、以下の4つのメリットが得られます。

アイデア提案の習慣化

デザイン思考では、失敗を恐れずにアイデアを出していくことが奨励されます。
そのため、アイデア提案のハードルが下がり、習慣化しやすくなります。

イノベーションの創出

デザイン思考は、ユーザーのニーズを深く理解し、課題の本質に迫っていくアプローチです。
そのため、従来では考えられなかったような新たなアイデアが生まれやすくなります。

多様な意見の受容

デザイン思考では、多様な意見を尊重し、合意形成を図ることが重要です。
そのため、多様性への理解が深まり、より良いアイデアが生まれやすくなります。

チーム力の強化

デザイン思考では、チームメンバー全員が積極的に参加し、コミュニケーションを重視します。
そのため、チームワークが向上し、より強いチームに成長することができます。

デザイン思考の注意点

デザイン思考は、ユーザーのニーズを深く理解し、課題の本質に迫っていくアプローチです。そのため、ユーザーの求める商品やサービスを作成しやすくなる一方で、いくつかの注意点もあります。

0からの新しい創出には向かない

デザイン思考は、ユーザーのニーズをもとに発想するアプローチです。
そのため、ユーザーが思いもつかないようなものを生み出すには向いていません。

例えば、新しい家電製品を開発する場合、ユーザーのニーズを調査した上で、既存の家電製品にはない機能を追加したり、既存の家電製品を組み合わせたりして、新しい製品を開発するといったことができます。
しかし、全く新しい家電製品をゼロベースから開発するには、デザイン思考は向いていません。

ユーザーが本当に欲しいものは声の中にはない

デザイン思考は、ユーザーの声を分析して、ユーザーのニーズを把握します。
しかし、ユーザー自身が「自分は本当は何が欲しいのか」を明確に把握していない場合、ユーザーの声からニーズを正確に把握することは難しいです。

例えば、ある企業が、新しく発売するスマートフォンの機能を検討しているとします。
ユーザーアンケートを実施したところ、多くのユーザーから「カメラの性能を向上してほしい」という声が寄せられました。

しかし、これはあくまでもユーザーが「カメラの性能を向上させれば、スマートフォンの使い勝手が向上するだろう」と考えていることを示しているだけです。
ユーザーが本当に求めているのは、「スマートフォンを使って、より良い写真を撮りたい」という欲求かもしれません。

そのため、デザイン思考を活用する際には、ユーザーの声を分析するだけでなく、ユーザーの欲求や価値観を深く理解することも重要です。

時間・費用がかかる

デザイン思考は、ユーザーのニーズを深く理解するために、さまざまなプロセスを踏む必要があります。
そのため、時間とコストがかかる可能性があります。

例えば、デザイン思考の5段階のプロセスをすべて実施するには、数ヶ月から数年かかる場合もあります。
また、ユーザーのニーズを深く理解するために、ユーザーインタビューやワークショップなどの実施も必要です。これらの活動には、人件費や会場費などのコストがかかります。

デザイン思考を活用する際には、時間とコストのかかることを考慮し、慎重に導入を検討する必要があります。

これらの注意点を踏まえて、デザイン思考を効果的に活用しましょう。

デザイン思考に役立つフレームワーク3例

デザイン思考の基本のプロセスを理解したうえで、フレームワークを活用して実践すると、スムーズに進めることができます。
デザイン思考を実践する際に有効なフレームワークをご紹介します。

事業環境マップとは

事業環境マップは、自社のビジネスモデルに影響を及ぼす可能性のある外部要因を分析するためのフレームワークです。
外部環境には、マクロ環境とミクロ環境の2つの視点があります。

マクロ環境は、企業にとってコントロール不能な環境です。
政治的環境、経済的環境、社会的環境、技術的環境などが含まれます。

ミクロ環境は、企業にとってある程度コントロール可能な環境です。
市場規模、顧客動向、競合他社、技術の進歩、法的規制などが含まれます。

事業環境マップでは、マクロ環境をトレンドと経済、ミクロ環境を市場と産業に分けて、以下の4つの要素を評価します。

  • トレンド:人口動態、ライフスタイル、価値観などの変化
  • 経済:経済成長率、インフレ率、金利などの変化
  • 市場:市場規模、成長率、競争状況
  • 産業:サプライチェーン、技術革新、規制などの変化

事業環境マップを活用すること、以下のメリットがあります。

  • 自社のビジネスモデルが直面する外部環境の変化を把握できる
  • 外部環境の変化に応じたビジネスモデルの見直しや改善を検討できる

事業環境マップで、自社のビジネスモデルに影響がある外部要因を分析しましょう。

SWOT分析とは

SWOT分析とは、企業やプロジェクトの強み(Strengths)、弱み(Weaknesses)、機会(Opportunities)、脅威(Threats)の4つの要素を分析するフレームワークです。

  • 強み:自社の持つ優位性
  • 弱み:自社の持つ劣位性
  • 機会:自社にとって有利な外部環境の変化
  • 脅威:自社にとって不利な外部環境の変化

SWOT分析は、以下のメリットがあります。

  • 自社の強みや弱みを客観的に把握できる
  • 自社を取り巻く外部環境の変化を把握できる
  • 自社の強みを活かして機会を捉え、弱みを克服して脅威を回避するための戦略を立案できる

SWOT分析は、企業やプロジェクトの戦略を立案する際に欠かせないフレームワークです。
自社の強みや弱みを把握し、外部環境の変化を理解することで、より効果的な戦略を立案することができます。

共感マップとは

共感マップは、ターゲットとなるユーザーの視点から、その人が置かれた環境下で抱く感情、思考、行動、環境に関する情報を可視化するフレームワークです。
共感マップは、以下の6つの要素から構成されています。

  • Think and Feel(考えていることや感じていること):ユーザーが考えていることや感じていることを、具体的な言葉で書き出す
  • Say and Do(言っていることや行っていること):ユーザーが言っていることや行っていること、その理由を書き出す
  • Hear(聞いていること):ユーザーが聞いていること、その意味を書き出す
  • See(見ているもの):ユーザーが見ていること、その意味を書き出す
  • Pain(痛みやストレスを感じていること):ユーザーが抱える痛みやストレスを書き出す
  • Gain(得られるもの・欲しいもの):ユーザーが求めているものや、得られたいものを書き出す

共感マップを作成することで、ユーザーの視点に立って課題を理解し、ニーズを特定することができます。

デザイン思考におけるペルソナ設定

デザイン思考では、ユーザーのニーズを深く理解することが重要です。そのために、ペルソナ設定を行うことで、ユーザーを具体的な人物として捉え、その視点に立って考えることができます。

ペルソナとは、特定の製品やサービスを利用する典型的なユーザー像を想定したものです。年齢・性別・職業・収入などの属性情報だけでなく、価値観やライフスタイル、抱える課題やニーズなど、その人物の特徴や内面を具体的に設定します。

デザイン思考におけるペルソナ設定のメリット

ペルソナ設定を行うことで、以下のようなメリットがあります。

  • ユーザーのニーズを深く理解できる
  • ユーザー視点を意識した製品やサービスの開発につながる
  • チームメンバーの共通認識を形成できる

ペルソナ設定を設定する方法

ペルソナ設定を行う際には、以下のポイントを押さえます。

  • 客観的な情報をもとに作成する
  • 属性情報だけでなく、内面も含めて具体的に設定する
  • 自社に都合のいい情報だけを拾わないようにする
  • 定期的に見直す

ポイントをおさえた上で、以下の手順に沿って、ペルソナ設定を行います。

  1. ユーザーに関する情報を収集する

ユーザーインタビューやユーザーアンケート、営業担当からのヒアリングなど、さまざまな方法でユーザーに関する情報を収集します。

  1. 情報を整理して分析する

収集した情報を整理して分析し、ユーザーの特徴や内面を把握します。

  1. ペルソナを作成する

整理した情報をもとに、ペルソナを作成します。

デザイン思考の成功例

デザイン思考は、ユーザーのニーズを深く理解し、課題の本質に迫っていくアプローチです。そのため、ユーザーの求める製品やサービスを生み出すことにつながり、多くの成功事例があります。

AppleのiPod

AppleのiPodは、デザイン思考によって生み出された製品の代表例です。
当時、音楽業界ではCDプレーヤーが主流でしたが、Appleはユーザーの潜在的なニーズを掘り起こし、新たな製品を生み出しました。

まず、Appleはユーザーの音楽の聴き方を観察しました。
その結果、CDからデータを移行する手順が煩雑で、いつでもどこでも好きな曲を聴きたいというニーズがあることがわかりました。

そこで、Appleは「すべての曲をポケットに入れて持ち運ぶ」というコンセプトを掲げ、iPodの開発に着手しました。
iPodには、CDからデータを自動で移行できるオーディオシンクや、曲を選びやすいドーナツ型ホイールなどの機能が搭載されています。

また、Appleはプロトタイプの作成とフィードバックの繰り返しを行い、ユーザーのニーズを徹底的に追求しました。
その結果、iPodは爆発的なヒットとなり、音楽業界に革命をもたらしました。

Spotifyのプレイリスト

Spotifyは、サブスクリプション型の音楽ストリーミングサービスです。
Spotifyの最大の特徴は、ユーザーが好きな曲を自由に組み合わせてオリジナルのプレイリストを作成できることです。

Spotifyは、ユーザーのニーズを調査する中で、「好きな曲を自分の好きなように組み合わせて聞きたい」というニーズがあることがわかりました。
そこで、Spotifyはプレイリスト機能を開発しました。

また、Spotifyはユーザーのニーズを掘り下げるために、アンケートやインタビューなどの方法で調査を続けました。
その結果、ユーザーは、ただ好きなときに好きな曲を聞くだけでなく、その日の天気や気分に合わせて聞きたい曲が違うことがわかってきました。

Spotifyは、こうしたユーザーのニーズを反映したプレイリストを積極的に公開しています。
その結果、Spotifyは多くのユーザーに支持される音楽ストリーミングサービスに成長しました。

デザイン思考についてのまとめ

ここまでデザイン思考についてお伝えしてきました。
デザイン思考の要点をまとめると以下の通りです。

  • デザイン思考とはユーザーのニーズを深く理解し、新たな価値を創造するための思考法で
  • デザイン思考の方法は5つのプロセス「共感」「定義」「概念化」「概念化」「検証」を行うこと
  • フレームワークとは

これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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